16.12.3放送予定

「雲竜剣」

(THE FINAL 後編)

Key Word : 池波先生の宿題


 目白台の私邸にて休養をとっていた長谷川平蔵の元に、平野屋源助が目通りを願っているとの使いが届く。ところが、料亭茶屋橘屋で待つ平蔵の前に現れたのは、同心、沢田小平次のみ・・・異変を察知する平蔵に届いたのは、同心片山慶次郎が斬殺されたの報だった。

 腕利きの片山が斬られたことから、相手は相当な遣い手。そして斬られたその場所が入間川のほとりと聞き、平蔵は自身を危うくした一つの出来事を思い返す。


 かつて剣術道場の恩師高杉銀平と相まみえた雲竜剣

 平蔵や火盗改メに挑んで来た怪剣。


 その二つの剣のぴたりと符合する一面に全く噛み合わない一面の矛盾を解決できぬままの平蔵を嘲笑うかのように、相手は再び同心金子清五郎を手にかけた。

 重い空気を振り払うかのように、火盗改メは総動員で、目の前の手掛かりを元に捜査の網を限界まで拡げるのだが、杳として先が見えて来ない。


 一方、平野屋源助のもたらしたのは、鍵師の助治郎が現れたとの情報だった。腕利きの助治郎には方々の大盗賊から合鍵づくりの依頼が届くゆえに、その背後には必ず大きなお盗めが存在する。そして何より、言葉の端々にのぼる地名が、雲竜剣に縁のある地名だったのだ。


 案の定、助治郎を足がかりにした探索は、この一件のピースピースを少しずつ繋いでいきはじめるのだが・・・それでも、先の矛盾を解き明かす答えは、まだ平蔵の元には届かなかった。


 池波先生が製作スタッフに課した宿題。

 じつはずっとずっと気になっているキーワードです。あとがきで触れられていた「制作陣が池波先生から課された宿題」の答えが、この作品に描かれたんでしょうか。それとも、宿題は宿題として、スタッフ1人1人の中に刻みこまれていて、今後姿を変えて現れてくるのでしょうか。

 みなさんはどこかでもう気づいているのでしょうか。まだ分からない私にとって、今回の注目点はこれ1択です。




 さて、いよいよ吉右衛門版鬼平犯科帳は最終話とのことで。そういえばFINALは、前編後編とも左馬之助が結構な働きをするお話しでしたね。本放送はずいぶんと形を変えているようですが。

 左馬之助の密偵?同心?としての成長ぶりを見ていると、将来、平蔵の息子辰蔵が火盗改メの長官なんぞになったりしたら、まさか悪友阿部弥太郎が・・・桑原桑原・・・などと思いつつ。

 雲竜剣という、長編としてバランスが良いと感じさせる話も魅力的ですが、個人的には、未完の大作「誘拐」や、平蔵の思考も生き様も、何より作品の世界観も揺らぎ惑い袋小路に入り込むような雰囲気を持った1話を持って来て、後味悪く、議論の種を残して欲しいと思ったりしています。人の矛盾や両面性、両義性が、近年の吉右衛門版鬼平には無さ過ぎましたから。


 とは言え、赤い空を背負った剣客に圧倒され、脳天から斬られる夢・・・長谷川平蔵を悩ませるあの悪夢って絵になるんですよね。歴代の雲竜剣と見比べながら楽しみたいと思います。




「雲竜剣」,鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第15巻


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