05.02.08放送

「山吹屋お勝」


Key Word : 晩年の恋心


 三沢仙右衛門の息子初造が、盗賊改メの役宅に現れた。平蔵の従兄弟である仙右衛門であれば、酒の相手としてたびたび役宅に来ているものの、息子初造となると話は別。滅多にない訪問に平蔵も緊張する。

 さて。初造の話は、父仙右衛門の嫁取り宣言の話。その相手というのは山吹屋という茶屋の女中「お勝」。息子として父の再婚を好ましく思う一方で、良く知らぬ相手に不安を隠せない初造。果たしてどのような素性の女なのか、平蔵は興味津々で首実検に向かうのだが・・・。


 若い時分の恋愛と年を経てからの恋愛とでは、どちらにリスクがあるのか。そんな事比べようもないのでしょうけれど。様々な経験を経た上での純粋な想いは、それだけ重みがあるのかも知れません。

 今日こそお勝を家に迎えるのだと、息巻いて役宅へ来た仙右衛門に、どのような説得をするべきか。再び夜具に潜り込んでしまった平蔵の思いは、どんなものだったのだろう。

 説得の手段が思い浮かばずに、困って頭を抱えたのか。それとも、その情熱を断たねばならないことが分かったときの仙右衛門の落胆ぶりを思うと、気の毒な思いで一杯だったのか。

 私は後者のような気がするのです。


 ところで、吉右衛門版鬼平では二回目の放送らしいこのお話。少し内容を変えてスペシャルにしているそうですね。
(ごめんなさい、前作を見てないのです・・・。)

 原作では比較的初期の作品ですが、人間関係が入り組んでいます。古くは小房の粂八のボスであった野槌の弥平の話から、蓑火のお頭の最期を描いた「老盗の夢」、久栄の初めての男が登場する「むかしの男」、面白おかしく同時に今後の伏線に富んだ作品「霧の七郎」、今回の「山吹屋お勝」など、複数話にわたって関連を持たせられることから、スペシャルに持ってきたんでしょうか。霧の七郎も執念深いものです。

 そんなところに注目しながら、放送を見てみたいと思います。


鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第5巻,第6話
鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第1巻,第5話
鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第4巻,第1話

戻る