98.5.6放送

「眼鏡師市兵衛」


Key Word : 盗賊の隠居



元盗賊、瀬川の友次郎の家は現在空き家になっていた。
ある一件で友次郎は殺害されていたのだ。

この空き家を訪ねる眼鏡師の市兵衛を、盗賊改メの同心細川峯太郎が目撃した。
元盗賊への訪問者であり、細川はこの市兵衛を尾行した。
市兵衛はすでに足を洗った隠居であったが、昔は大盗賊簑火の喜之助の下で鍵師
をしており、その縁で友次郎から金を預かっていたのだ。


ある日、市兵衛と共に喜之助配下であった三雲の利八が市兵衛を訪ね、
鍵作りを依頼する。身の危険を感じた市兵衛は姿を消した。


隠居した者への仕事の依頼はいわば掟破り。
市兵衛は掟を守り抜いた本格的盗賊であり、鍵作りなど毛頭考えていない。


盗賊にとって隠居は大がかりなものであり、大盗賊の隠居の際には隠居金や
配下への「おさめ金」など、莫大な費用が必要である。

これも足を洗った後の生活の保険であり、即ち、二度と盗みに手を染めない
という事への保証でもあった。


なお原作の題名は「二度ある事は」である。

鬼平作品後期にて、うさぎこと木村忠吾とそっくりの立場を与えられるのが
同心細川である。腕っぷしが弱く、愛嬌があり、菩提寺も忠吾と同じ目黒の
感得寺。


年上好みの細川は(実は忠吾も年増好き)、
 お長という年増の色香にやられ(一度目;「俄か雨」)、
  女房をもらった直後に浮気心を出し(二度目;「草雲雀」)、
   そして今回の血迷いが「二度ある事は・・・」という寸法である。


友次郎と市兵衛の関係はこの「草雲雀」に書かれているが、
都合の良い(悪い?)ことに、友次郎宅の隣りがお長の茶屋である。


鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第20巻,第2話

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