98.4.22放送

「瓶割り小僧」


Key Word : 弱味



今回は一風変わった、どちらかというと小咄的な物語である。


捕らえた盗賊石川の五兵衛を見ているうちに、長谷川平蔵の脳
裏にある情景が浮かんでくる。

平蔵が父宣雄の病没直後、長谷川の家を継いだばかりのころ、
所用で麻布へ行った帰途に刀の研ぎ師、竹口惣助の家を訪ねた。
すると向かいの瀬戸物屋が騒がしい。



店の主人と七つ八つの子供が言い合いをしているのだが、
どうも主人の方が分が悪いようだ。
野次馬もそこは江戸っ子、子供の小気味よい言葉に、やんやや
んやの大騒ぎ。その場はどうにか収まったに見えたのだが、店
の用心棒が子供の後を付け始めたを平蔵は目撃するのだった。



さすがの五兵衛も昔の弱味を握られた相手では、しかもそれが
天下の鬼平では勝負あり。

子供の頃の悪さを知っている相手には
たとえば保育園や幼稚園の先生とか、
頭が上がりませんよね。


しかしこのガキ、結構憎たらしい。
う〜ん、読めば読むほど腹が立つ。
それだけ自分が大人と呼ばれる人間に近くなったのか。

子供の世界観、忘れてしまったもの・・・。


鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第21巻,第2話

戻る