98.4.29放送
「穴」
Key Word : いたずら心
ある化粧品屋「壺屋菊右衛門」方に盗賊が押し込み、金三百余両が
盗まれた。翌日の午後になってから店のあるじが気付いたほど巧妙
で、本格的なおつとめであった。
錠前は外れておらず、盗賊は合鍵を持っているはずなのだが、鍵型
をとった引き込みのいた形跡はない。
長谷川平蔵の右腕、筆頭与力の佐嶋忠介が事件を任され調べにあた
ったが、彼を以てしてもどうにもならなかった。
さて奇妙なことに数ヶ月後、金蔵の内に盗まれたはずの金三百余両
が戻されていた。
またも錠前は外されておらず、全くもって不可解千万。
ところが、密偵の大滝の五郎蔵・おまさ夫婦を陰で支える元盗賊舟
形の宗平が、盗賊改メの役宅を訪ねてきた。
昔なじみの鍵師助治郎に十五年ぶりに会って、最近ある盗賊に鍵を
売ったという話を聞き込んで来たのである。
鬼平作品に共通するいたずら心。
人が必ずどこかに持っている気持ち。
その気持ちが強いために、のめりこみ、鮮やかかつ手の込んだ
いたずらをしようと熱中していく。
本格的盗賊にはこの心が強い人が多いらしく、平蔵配下の密偵
が手を組み盗みをする話もありました・・・。
ところでいたずらっ子平野屋源助は、この後番頭茂兵衛
と共に、平蔵の配下にと見込まれ活躍をするが、しばら
くの間「穴掘りが好きなご隠居」と平蔵にからかわれる
ことになる。
鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第11巻,第3話
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