98.3.18放送
「むかしの女」
Key Word : 偽善
長谷川平蔵がまだ若く、放蕩無頼の生活を送っていた頃
おろくという女のひもになっていた時期があった。
何十年か後に再会した二人だが、このころのおろくは
昔の客であった男を強請り歩いて、生活をしていたのである。
平蔵はおろくの金の無心に、快く答えた。
しかし、この話を耳にした雷神党というごろつき集団が、
おろくの義弟を名乗り強請りを開始。
さらにおろくの持ち金も狙うのであった。
確かに人情味あふれる良い話なのだろうが、どうもおかしい。
結局はおろくも死なしてしまうことになる。
そう感じさせないのが平蔵の人柄なんだろうが、
盗賊追捕のためには、弱者は見殺し。
あの見事なまでの、平蔵の切れがない。
なんとなく平蔵の
「おれだとて神わざをもっているわけではねえのだよ、左馬。」
という言葉が、今回は言い訳じみていて、多少気にかかった。
旧友相手にこそもらせる弱音なのだろうか・・・。
それとも平蔵自身が悔いているからこそ、こう言ったのか・・・。
確かTV放送だと、助けちゃうんでしたっけ。おろく。
ちなみに「むかしの男」という話しもある。
平蔵の奥方、久栄の初めての男をめぐった物語だが、
こちらの場合では、悲しいほど見事突っぱねられている。
鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第1巻,第8話
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