相模の彦十が偶然見つけた盗賊一味を、平蔵たちが徐々に追いつめ捕らえる物語。
彦十が見つけた稲荷の金太郎は、盗人たちの拠点である盗人宿に向かう。
この盗人宿を見張るための見張り所を、その向かいに作った火盗改メだったが、
実はここが元大盗賊の隠居所だったことから、また別の騒動が起きるのだった。
鬼平の盗賊への捜査は、いつもここから始まる。
盗賊たちもあの手この手で火盗改メの目を逃れようとし、
また火盗改メに罠を仕掛けてくる。
そこをクモの糸をたぐり寄せるように次々と見張り所を見つけ、
盗賊の頭の居所を確かめ、
盗賊のねらっている商家を把握し、
押し込みの日取りを推測し、
そして盗賊団が皆そろったところで一網打尽にする。
緊張の連続。鮮やかな手際。
徐々に増してくる疲労感。
盗賊を追いつめていくにつれて高まる気持ち。
この事件の結果はたった2行、稲荷の金太郎一味が、赤坂・表伝馬町へ押し込もうとして、盗賊改方の網にかかり、とあるだけだが、
合わせて十七名の盗賊どもが捕らえられたのは、それから四日後のことであった。
ここにたどり着くまでの緊張感が、鬼平の真髄ではないだろうか。
ところで私のお気に入りの木村忠吾は、既にこのときには結婚している。
新婚ほやほやで、おのろけを同僚に話しては頬をゆるめる毎日。
ところが役目中に浮気の虫がむくむくと首をもたげ、ついには浮気に走ってしまう。
それを結局平蔵にとがめられるのだが・・・。