16.12.2放送予定

「5年目の客」

(THE FINAL 前編)

Key Word : 目こぼしの基準


 長谷川平蔵が高杉道場門下の剣友岸井左馬之助をともなって、密偵小房の粂八が亭主をつとめる「鶴や」にて酒を呑んだ、その夕刻。船着場の粂八が、江口の音吉を見つけたとささやいた。

 音吉は粂八が遠州の大盗賊・羽佐間の文蔵の手下であった頃の仲間であり、手練れの引き込みだった。つまりは近々文蔵が江戸でお盗めをすることを暗示する。

 さっそく左馬之助が尾行をすると、音吉は浅草橋近くの近江屋で女と逢いびきしたのちに、東神田の旅籠丹波屋源兵衛へ入って行った。


 平蔵はすぐさま手配りし、丹波屋周囲へ網を巡らす。すると、音吉が逢いびきした相手は丹波屋女房のお吉であることが判明したのだ。

 女をつかった盗みはしないはずの文蔵。

 首をかしげる粂八の違和感は、音吉とお吉の過去の話に答えがあった。火盗改メの網が徐々に徐々に獲物を捕らえようとするその前に、その過去が一つ暴発する・・・。



 目こぼし。

 何度読んでもなかなか明確に線引きできないのが平蔵のこの目こぼしの基準でして。

 過去に縛られやむなく人を殺めた罪を、ちゃんと負わせる裁きもあれば、拍子抜けするほどあっさりと目こぼすこともあるのです。この罪に問う問わないの基準はどこにあるのでしょう・・・まだまだ私には難しいようです。


 何となく初期作品は甘いような気もしつつ、いやいやまさか池波先生がぶれるはずない・・・などと不遜な思いも浮かんでは消え浮かんでは消え(こら)。ちょうど某校閲ドラマのタイミングで指摘出しするやしないやら何作品も重ね読みしてしまいます(苦笑)

 そんなところを中心に、吉右衛門版は今回次回のあと2作品、存分に楽しみます。



鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第4巻,第2話

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