97.6.18放送

「毒」


Key Word : 権力と人の心




掏摸の伊太郎が掏摸の現場を平蔵に見られてしまったことから起こる事件。


伊太郎が陰陽師、山口天竜から掏摸盗った袱紗包みの中には、
金のほかに、薬が縫い込まれていた。

その後の調べで、この薬は毒薬であることが分かる。
さらに天竜の背後には、将軍家斉の御側衆、大身旗本土屋左京教明が控えていた。


土屋家で何か起こっている、そう感じた平蔵は、腹を切る覚悟で調べを続行した。




誰に毒を盛ろうとしたかは定かにされてはいないが、おそらく相手は将軍。

将軍だけでなく老中、若年寄にも受けが良く、実直と思われていた土屋左京が、
何故将軍暗殺など企ててしまったのか。

思い上がったのか、それとも誰かにはめられたのか。


いずれにしても自分が思いがけない力を持ってしまったとき、
自分が大きく成長し、自信を持つと同時に、
魔が差したり、自分ではなく他人の意志によって
その力が思わぬ方向に向けられてしまうことも、現実に良くあることではないだろうか。




ところで結局伊太郎は、その後逃亡したことにされ、
実は火付盗賊改方の役宅の小者として、働くことになる。

その後平蔵が病没したとき、世をはかなんで自殺を図る。
しかし一命をとりとめ、平蔵夫婦の墓守をして、一生を終えることになる。


鬼平犯科帳,池波正太郎,文春文庫,第11巻,第6話

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